20年程前に個展をした時、ピカッと光沢のある漆器をつくり、並べていました。
お客様ほとんどの方が、入り口に入られてすぐに「手入れは?」「どんな布を使って磨くの?」など、とにかく扱いの質問をするばかりで、器の形や価格を見るのは二の次でした。
私は、もっと気楽に使える漆器を作りたいと考えました。 まず最初にキズが付くのが怖いなら、最初からキズだらけにしてしまおうという逆転の発想です
つまり使い古した雰囲気を作るのです 当時ジーパンを買うと新品の雰囲気が嫌でわざわざ洗濯してから使用し始めました つまりジーパン感覚の漆器です
塗りあがった後にすごく細かいペーパーで全面を研ぎ、その後、拭き漆と言って漆を刷り込んで仕上げるようになりました、漆を刷り込むことにより、塗りあがりの表面より強くなり、爪をたてて引っかいても傷が付かないほどの硬い表面になりました 次にお客様の心配はすぐ剥げるという不安です 研究しました。剥げるとは木地と塗りの密着が悪いまたは厚い漆塗りが欠けることと分かりました。
木地と下地の密着は木地に最初、生漆を吸い込ませる木固めの工程をしっかりすることで剥離が少なくなりました。 また厚めの漆ですが、これは下地の工程の時に生漆と地の粉、との粉との混合配分によって異なる事がわかりました。 丈夫さと混合比率を研究しました。すると漆が多い方が丈夫とわかったのですが、ヘラでは付けられないほど柔らかい下地漆が出来、刷毛で下地を塗ることにしました 刷毛で下地をしたら刷毛目が残ります、伝統工芸の世界では刷毛目は研いで平らにするのが基本ですが、あえて平らにする必要はないと考え、刷毛目も手の味と考えました。 下地の上に黒中塗りを塗り、朱漆を塗って研いだら、根来の雰囲気になり、根来塗り中心の作品を作るようになりました。 中塗りを朱漆、上塗りを黒漆にして研ぎだしたら、黒の下の朱色が出て、曙塗りとなりました。 |