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私が根来塗りを作るようになってから14年
| 私は高校卒業後、父から塗りを習いました。毎日きれいな塗りの上塗りをした時、塗ってムロの中に入れて30分経ってから、また一個一個出して |
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ゴミを取っていくのです(鳥の羽を尖らせたもので)、それが神経を大変使い肩もこるのです。 |
| ある時,展示会などでお客様に漆器を気楽に使って下さいと言いながら実際は神経ピリピリで作っている自分に矛盾を感じてきました。 |
また、個展でも、お客様は漆器の取り扱い方を聞くのが最初で,どこへ行っても皆さんがキズや剥げを心配しているのがよくわかりました。 |
| このままではドンドン漆器は使われなくなる、特に若者は漆器ばなれが間違いなく起きると感じました。 |
| どうしたら漆器をもっと気楽に使ってくれるだろうか、使いやすい漆器とは、どのようにすればいいのだろうか?と自分なりに研究しました。 |
| なぜ漆器を怖がるのか?キズが付きやすい、剥げ易い、手入れが面倒、これらの問題を解消するにはどうすればいいだろう!! |
| 最初、キズが付くのが怖いのなら、初めからキズだらけにしたらいい…… |
| 剥げ易いというなら、剥げにくい漆器を研究すればいい(技術研究の問題)…… |
| 手入れが大変というなら、手入れが簡単にさせて丈夫であればいい |
| 気楽に使えないという雰囲気ならば、まず気楽な感じで作ってみよう!! |
10年間使った雰囲気を作るために細かいペーパーで全面を研ぎ、そしてその上を拭き漆して漆を吸い込ませました、それによって従来より硬い |
| 表面になり爪を立てて引っかいてもキズつかないようになりました。 |
| 剥げ易いのはなぜか?つまり、木地と最初に塗る漆との密着が悪いから剥げることがわかりました。 |
| 最初の密着が悪い塗りをして,その上に何回塗り重ねても剥げるということも解りました。 それで一番最初に生漆(漆の木からとれたまんまの漆)をタップリ木地に吸い込ませればいいと思いました。 |
| 昔からある漆塗りの技術書も見て研究しましたが、やはり木固め、または、木地固めてと言う名称で当たり前の塗りでした。 |
| ところが近年の漆器製造工程を調べてみると、この木固めをしてない漆器が沢山市場に出ていることがわかりました。また下地が漆ではなく |
| 塗料で塗られているものが多く出回っていることも知りました。 |
| 私は丈夫な漆器を作るためにまず全品、木固めは絶対しよう、そして下地は漆の下地で行こうと決めました。 |
| 丈夫な下地とはなんだろう、多くの下地は生漆に地の粉やとの粉をまぜて下地漆を作るのですが、どのような比率でまぜるのが一番丈夫なのか |
| 研究しました。それは地の粉より漆をより多くした方が丈夫という結論に達しました。 |
| ところが漆を多くしていくと液体状なのでヘラで下地が出来ないのです(一般的には粘土状の硬さなのでヘラで下地が出来ます) |
| それで刷毛で下地をする事にしました。すると乾くと刷毛目が残るのです。伝統工芸の漆の世界では刷毛目はきれいに研いでなくするのが基本 |
| なのです、 しかし私はあえて刷毛目を残したままでいいと判断しました。なぜなら一個一個手作りなんです、全く同じ椀である必要はないのです。 |
| 一個一個バラバラでいいし、同じものがふたつとないのがいいと私は思いました。 |
| 下地の上に黒漆を塗り重ね、最後に朱漆を塗って、先ほどの説明どおり、軽く研いで漆を吸い込ませました。 |
| すると全面朱漆の中に研いだら、刷毛目の部分が黒が出て根来塗り状態になったのです。 別に根来塗りを作ろうという目的ではなかったのですが,結果的に根来塗りになってしまったのです。 |
| 別に私は違うと言いはる必要もないので,誰でもわかりやすい根来塗りですと言うようにしました。 |
| そして根来塗りの由来を調べました。すると根来寺のお坊さんが自分の寺で使う漆器を自らが製作したと書いてあるのです。ビックリしました。 |
すでに使う漆器、使い込む漆器の原点があったではないか、私は勉強不足ではないのか |
| 使うやすく、剥げにくい仕事をしたのです。ですから形も洗練されているし、塗りも丈夫さを主体としているので力強いものがあるのです。 |
| ですから、全国に根来塗りフアンが沢山おられて,骨董屋さんでは大変な高値で売買されているわけです。 |
| 私は自分が使いたいもの,欲しいもの作る基本ですから、それらの形を根来塗りで作るようになって来ました。 |
| 形をつくる時(デザインするとき)私の心の中に問いながら作ります,自分の内面の芯なるところから発する形を作ります。今から14年前,私の環境 |
| は大変な状況で(人に言えない)、それを形に自然に表現してしまったのでしょう、通称ゴツゴツ、荒挽根来シリーズが誕生しました。 |
| 初めて見たお客様はビックリされたと思います。伝統工芸師であった父も漆器とは認めなかったし、妻以外の家族も親戚にも、そして同業者にも |
| バカにされました。でも私と妻は誰がナント言おうが自分がいいと思うものを作っていきたいし、お客様に提案したい思い、売るあてもなく木地を |
| 作ってもらい,毎日二人で塗り始めました。しかし注文もなく作っているわけですから、ドンドン仕上がり,在庫になるわけです。 |
| 仕事場の半分の場所が在庫で埋まり、今後作っていくお金もない不安な毎日の時に、家庭画報の編集部から電話がありました。 |
| ビツクリしました、初めての雑誌取材です。 |
| 丁度、その頃、工房の床を漆塗りを仕上げており、あと一週間で仕上がるところでした。 |
| 私は自信があったのですが、業界ではタブーとされているチヂリ(漆を厚く塗ると、表面の漆が引っ張られてちぢむこと)が床全面ですから、彼らが |
| なんと言うか興味しんしんでしたので、あえて、工房を案内しました。 |
| 結果はビツクリ,カメラマンも編集部の方も床と壁に感動しました。壁は1階にいろりがあって、そこのススで黒くなっており、100年もの家ですから |
| なんともいえない風流さがあったのだと思います。そして床ですが,大好評であり、結局,床の上に直接作品をとることになりました。 |
| そして家庭画報に載ってから全国各地のお店の方の来客も多くなり、また百貨店でも私のコーナーを作ってくれたりして、 |
| 作品がドンドン売れ出し、忙しくなってきました。 |
| 誰か仕事を手伝って下さる人が欲しいとさがしました。今まで色々な会社を見ていると従業員と社長の奥さんと合わない |
| ケースを見ていたので、私の奥さんに一番合う人を選びました。つまり妻の母親です,次には妻の姉、そして親類の人というふうに奥さんと波長の |
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合うメンバーを増やして来ました。
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| そして現在は私の子供3人も一緒にしてくれることになりました。長男も結婚して赤ちゃんも産まれ,私もついにおじいちゃんになってしまいました。 |
| まだまだ課題も沢山ありますが、これからも自分の心の内に問い、自分がいいと思うもの、自分が欲しいと思うものを作って行きたいと思います |
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