日本の伝統工芸・漆器 うるし工房 錦壽(山岸厚夫)
 
 
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山岸厚夫
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作り手・山岸厚夫

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2004年 10月号 家庭画報

掲載内容


現代の食事に合わせて
生まれ変わり続ける器


山岸厚夫さんの漆器


気楽に毎日、楽しく使える「Gパン感覚」の漆器を目指していると山岸さんはいいます。

 モダンでシンプルで飽きのこないデザイン、ごしごし普通に洗える丈夫さ。この二つを兼ね備えた、洗いざらしのGパンのような漆器をつくりたいというのです。
 福井県鯖江市。伝統の「河和田漆器」の産地に生まれた山岸さんは、二〇代の頃から、一般の人に敬遠される美術品のような漆器に未来はないと痛感してきました。
「展示会をしても、剥げるとか、傷がつきやすいとか、手入れが大変といった反応ばかり返ってきて、いかに漆器が日常から縁遠くなっていたかわかったんです」
 そこで取り組んだのが、丈夫で傷つきにくい根来塗でした。赤や黒の漆を塗り重ねるので、傷が目立たず、万一剥げて下の色が出ても、それが味わいとなる根来塗は、漆器を「昔のような普段づかいの器に戻したい」と考える山岸さんの感覚にしっくりなじみました。
 また、形も、和・洋・中・エスニック……と、さまざまな料理が並ぶ現代の食卓にふさわしい、シンプルで多用性のあるものを求めて試作を繰り返してきました。
「そして、毎日、毎口、徹底して白分で使って試すんです」
 その結果、たとえば、ダイナミックで美しい形が魅力の合鹿椀も、テーブルに椅子という今の生活には、高台が高すぎて少々使いにくいと感じたそうです。
「だから、高台を取ってしまったら、うちの子どもたちが、年中その器を使うんですよ。ラーメンにも、カレーにも、サラダにも」
子どもたちが何度も手に取るものは、大人にも使いやすい、いい器だと思う、と山岸さん。
 また、狭いスペースにも対応する、重ねやすく収納しやすい漆器を作るよう心がけている、とも。
「一人が満足する美術品をつくるより、1000人が楽しんでくれる雑器をつくりたいですからね」

「子供が何度でも手に取るものが
        本当に使いやすい器」



上・右の「荒挽多用ボール」は合鹿椀の高台を取った形。赤・黒とも7350円。
左は最新作の「四つ組応量器」。もとは僧侶が使う人れ子式の器だ。3万6750円。
右・刷毛曙七寸盛皿。山岸さんの漆器は、油を使った料理を直接盛りつけても大丈大なので、カレーやパスタ用の皿にも。皿に残ったご飯粒の最後のひと粒も見事にすくえる。1万500円。刷毛曙レンゲ3150円。



奥さまと娘さんの手づくりのご馳走を自作の漆器に。
右は、この地方独特の郷士料理で、
人きな葉(アブラギリ〕の中身は五目寿司。
お祭りのときには欠かせない一品です。
手前右の揚げそばあんかけの器は、
福井県特有のおろしそば用陶器と同じ形。
サラダ、おでんの取り皿などに大活躍するという。
文/太田雅子



漆器を傷つけない漆塗りのカトラリー。
パスタはからめやすく、煮豆も取りやすいなど、
使い勝手がいい。下のカレースプーンから順に、
5250円、5250円、3675円、2100円。

山岸厚夫さん
1951年、福井県鯖江市生まれ。伝統
の河和田漆器の塗師5代目として、
学生の頃から漆塗りを手伝ってきた。
高校卒業後、本格的に家業を継ぐが、
伝統的な漆器の制作に隈界を感じて、
88年より創作活動を開始。時代にマ
ッチしたモダンな根来塗のオリジナ
ル漆器を展覧会などで発表している。
●工房「錦壽」電話0778(65)3001
スタイリング/細田宏美


有限会社 錦壽
(ゆうげんがいしゃ きんじゅ)


〒916-1232
福井県鯖江市寺中町21-2-1
TEL:0778-65-3001 FAX:0778-65-2490
店舗運営責任者:山岸厚夫


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