角偉三郎さんとの出会い

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東京 銀座に現代美術の草分けである東京画廊がありますが、ここのオーナー
の奥さんがホテルオークラにメノワという店を出されていました。
このメノワの商品はすべてオリジナル商品のみで構成されており、毎月のように
商品開発会議がホテルオークラの2階(当時 外務大臣 牛場様の事務所)
で行われており、そこに中心メンバーと作家、紙、陶器、ガラス、彫金、そして
漆など会議に参加できる人は参加して新商品の企画の話をしていました。
その中で漆の関係者は角さんと私でしたので、自然と親しくなって行きました。
角さんの作品を初めて見たのは日本橋の高島屋での個展でした。
その時は何も話はしなかったです。
その後、私の家に来て下さったり、私が遊びに行ったりしました。
それから角さんがNHK特集で手で漆を塗るシーンが出てから有名になり、
個展依頼や雑誌の取材、テレビ出演が多くなり、私はあまり会わないように
しました。
ある日、角さんから漆の会を作りたいとの話があり、何回か会うことになりました。
3人が発起人で、全国の産地から5人ずつ集め、東京のギャラリーは10軒集め
作り手と売り手が話会う場を作ろうということになりました。
会の名前は「うるし山脈」ということにしました。
3ヶ月ごとに東京で会議を開催しました。
東京のギャラリーの方と20人ぐらいの作家の集まりです。
そして展示会も開催することができましたが、3回ほど展示会して、色々なことが
かり自然解散のような形になってしまいました。

角さんとの共同の仕事は東京画廊の当時の社長さんである山本孝さんが亡く
なられ3回忌の時に漆の引き出物を依頼されました。
その引き出物は角さんと私の共同で作って欲しいと奥さんからの依頼でした。
私は輪島に行き、打ち合わせしました。
画廊だからペントレーにしよう、木地はヘギ目がいいじゃないか、
木地手配は角さんがして塗りは私がした方がいいと言われ、木地に越前和紙
を貼り塗ったらいいと角さんが指導して下さいました。

200個の注文で2ヶ月もない納期で私は毎晩夜なべをして仕上げました。
納品後、東京画廊のご子息から評判よかったよと言われ、ホッとしました。

また1990年には角さんが家庭画報に紹介して下さり、私の初めての雑誌
取材となりました。

ある時、私の所に西武百貨店ロフトの販売員の女性が二人来られ、
私のあこがれは角さんですと言われ、また明日、輪島に行くけれど角さんに
会えたら嬉しいとの話をするので、角さんに電話してあげるよと言って電話
したら、角さんがいいよとのこと、山岸くんはどうするのというので、私が車に
彼女達を乗せていくよ
角さんはそれじゃ宿をとっておくよと言われ、彼女達は大喜び
次の日、車で行きました、角さんの工房に行き、夕食には角さんも一緒に
そして次の日の昼はそばを一緒に
角さんに2日間も用件なかったの?と聞くと、
「山岸くんが来るのに、すべての用件はキャンセルだよ」
と言ってくれました。本当にうれしかったです

またある時、三越さんから角さんの合鹿椀は手に入らないのだけど、山岸さんは
知り合いだから手に入るのではないのという電話があり、角さんに電話したら、すぐ
一個送ってくれました。
するとまた三越からもう一個欲しいとのこと、
そんなこと私は二度と頼めないと言い、三越に断りました。
あとから聞いた話ですが、あの時、すぐ送ってくれた合鹿椀は棚に飾ってあった
作品だったとのこと、申し訳ないやら、うれしいやら、もう絶対無理なお願いは
しないでおこうと思った。

2年程前に用事で輪島に行ったとき、自宅に線香をあげに行きました。
奥さんと昔ばなしをしましたが、あとから奥さんから久しぶりに昔話が出来て
楽しかったですとの手紙が届きました。
私も色々なことが思い出されます

NHKの撮影の時、ご自分も手で塗ったので腕全体がかぶれた話、NHKの
スタッフもかぶれた話、手で塗った鉢が乾いた状態、塗っている時の画像は
勢いがありカッコいいのですが、その後、漆がたれるので内側の中央に溜まって
しまう、塗りあとようなものは残っていない

工房に訪ねた時の午後に高島屋のCMの撮影があるとのこと、どの服が
カッコイイかと私に聞かれても、私もそんなセンスは持ち合わせてないので
なんとも答えようがなかった。

角さんの合鹿椀が人気絶頂の時、日本全体でも人気があり、私にも
合鹿椀を作って欲しいとの依頼が多かった
輪島に行って、角さんに合鹿椀作ってもいいかなと言ったら、角さんの木地師
の山根さんの木地工場に私を連れて行き、ここにある色んな形の合鹿椀があるが
山岸君がいいと思う合鹿椀を作ってもらったら言われ、山根さんに何十個
か合鹿椀の木地を作って頂いたことがあります。

角さんは東京に行くと決まって銀座の東京画廊に行き、最近のアートを見て
勉強をしていました、
そしていつも「山岸くんと俺は兄妹弟子だからなぁ」言って下さっていました。
漆のこと、化粧箱の紙の紹介,ヘギ板の木地師の紹介など沢山教えて
下さいました。
有難う御座いました。